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名目GDPが600兆円を超えた。増えたのは、モノやサービスの量か、値段か

この記事で分かること

2025年2月、内閣府は2024年の名目GDPが600兆円を超えたと、1次速報で公表しました(609.3兆円)。ニュースで「GDP 600兆円」を見ても、買い物かごの中身が増えた感じはしない――そう感じる人もいると思います。

結論

(内閣府 国民経済計算。2025年は2次速報で、12月の確報で変わりえます) ※数字は国全体の量で、1人あたりではありません(この間に人口は約2%減りました)

では、上がったのは何の値段でしょう?

GDPと個人消費の、金額と量の伸び。2019年から2025年

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2019→2025年金額(名目)量(実質)
GDP+16%+2%
個人消費+15%±0%

出典:内閣府 国民経済計算。実質GDP・実質個人消費は2020年基準。2025年は2次速報で、確報で変わりえます。数字は国全体で、1人あたりではありません(この間に人口は約2%減。総務省 人口推計)


1. まず、暮らしで買うものの値段が上がった

2019年から2025年にかけて、私たち家計が買うものの値段を表す個人消費デフレーター(値段の水準を表す指数)は約15%上がりました(2019年10月の消費税率の引き上げの分も含みます。大きさは分けていません)。

その値段には、海外から買うもの(輸入品)の値段も入っています。ただし、GDPは国内で生み出した分だけを数えるので、海外から買ったものの代金は差し引きます。輸入品が値上がりすると、名目個人消費は増えますが、差し引く輸入の金額も同じだけ増えるので、名目GDPはその分では増えません。GDPデフレーター(GDPの値段の水準を表す指数)は、輸入を差し引いた、国内で生み出したものの値段です。

この記事の期間のうち2022〜2024年について、日本銀行は消費者物価が+8.7%上がったうち、+4.7%分は輸入物価の直接の波及だった、と分析しています(2026年1月の展望レポート)。

2. 輸入品の値段は円で大きく上がった。その多くは円安の分

企業が海外と取引する値段(日本銀行の企業物価指数)を見ると、2019年から2025年にかけて、輸入物価指数は、契約した通貨のまま(契約通貨ベース。ドルなど外貨建ての契約は外貨のまま、円建ての契約は円のまま)で約11.5%、円に直すと約42%上がりました。輸出物価指数も、契約通貨ベースで約10%、円に直すと約35%です。2019年から比べると、円に直した値上がりのうち約7割が為替(円安)の分でした(当メディアの試算。日本銀行 企業物価指数から算出)。

輸出入の値段の上がり方。契約した通貨のままと円に直した場合。2019年から2025年

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2019→2025年契約した通貨のままの値段円に直した値段
輸入の値段+11.5%+42%
輸出の値段+10%+35%

円に直した値上がりの約7割が、為替の分。日本銀行 企業物価指数(総平均、暦年の平均)。契約した通貨のまま=外貨建ては外貨、円建ては円。約7割は当メディアの試算(円に直した値上がりのうち、契約した通貨のままの値上がりを除いた分)

3. 国全体の所得のうち、海外へ流れる分(交易損失)は増えた

輸入の値段が輸出より大きく上がると、輸出品1つで買える輸入品が減った分(輸出と輸入の値段の比である交易条件が悪くなった分)、値段の変化を除いた国全体の所得(実質GDI)が目減りします。これを「交易損失」と呼びます。内閣府の国民経済計算(2020年基準)によれば、交易損失は2019年の約4.9兆円から2025年の約7.3兆円へ広がりました。途中の2022年には約17.6兆円まで広がった年もあります(2020年の交易条件を基準にした額で、基準の年を変えると額も変わります。年どうしの増減を見るための数字です)。

交易損失の額。2019年と2025年

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年交易損失の額(兆円)
2019年4.9
2022年17.6
2025年7.3

出典:内閣府 国民経済計算(2020年基準)。2025年は2次速報。額は2020年の輸出入の値段の関係を基準に計算。基準を変えると額も変わります

内閣府は、交易損失の拡大は「海外への所得移転の増加」を意味し、実質国内総所得(実質GDI)を「下押しする」と分析しています(令和7年度 年次経済財政報告)。

4. では、日本の輸出はどうでしょう

2019年から2025年にかけて、実質輸出は約11%増えました。ただし中身は、財の実質輸出が約6%、サービスの実質輸出が約29%です。サービスの輸出には、訪日客が日本で使ったお金が「非居住者家計の国内での直接購入」として数えられており、この額は2019年の約4.6兆円から2025年に約7.5兆円(実質)へ増えています。

内閣府は、日本は値段が変わっても買われやすい財やサービスを相応に輸出している、と推定しています。ただし内閣府自身、日本企業が現地通貨建ての値段を据え置いている可能性とは、この推定だけでは区別できないと書いています(令和7年度 年次経済財政報告)。

では、値段で増えた金額は、誰の手元に残っているのでしょう。これは次の記事で扱います。


後半(参照用)

言葉

参考:2019〜2025年より後の分析(2026年)

この記事が比べる期間(2019〜2025年)より後、2026年に入って起きたこと(中東情勢による原油価格の上昇、AI関連需要の拡大)についての日本銀行の分析です。記事本文の数字とは対象の時期が異なります。

前提と方法

断定できないこと

出典

(数字は公表されている統計をもとにしています。為替の分の割合など、当メディアが試算したものは本文中にそのつど明記しています。取得日は各raw資料のファイル名のとおりです。)