国民健康保険を払えなくても、給料は全部は差し押さえられない。ただし口座に入ったあとは別
この記事で分かること
- 給料から差し押さえてはいけない額を決める式(国税徴収法76条)と、月給20万・25万・30万円のときに差し押さえられる額の上限
- 老齢の年金と、障害・遺族の年金の差し押さえの決まり
- 給料が振り込まれた口座の差し押さえについて、裁判所が違法とした例と、違法とされなかった例
- 払えないと分かったときに申請できる、減免・徴収の猶予の仕組み(法律に書かれたもの)
国民健康保険(市町村が運営するもの)の滞納で、差し押さえをされた世帯は、令和6年度に全国で338,709件、差し押さえられた金額は658.9億円でした(厚生労働省の集計。差押世帯数と差押金額)。「払えないまま督促が来たら、給料も年金も全部持っていかれるのでは」と心配する人もいると思います。実は法律は、給料と老齢の年金について、差し押さえてはいけない額を式で決めています。
結論
給料は、全部は差し押さえられません。 差し押さえてはいけない額は、税・社会保険料・生活に必要な額などを足した額で、国税徴収法76条の式で決まっています(式は下の節2)。
月給からこの額を引いた残りが、差し押さえられる額の上限です。月給20万・25万・30万円のときの上限は、次のとおりです(当メディアの試算。令和8年中の給料の月額で計算。家族3人は、本人のほかに配偶者と15歳以下の子1人を養っている世帯)。
国民健康保険に入っている人(給料から健康保険・年金の保険料が引かれません。住民税は給料から天引きされます)
| 月給 | 一人暮らし | 家族3人 |
|---|---|---|
| 20万円 | 6.4万円 | 0円 |
| 25万円 | 10.0万円 | 2.8万円 |
| 30万円 | 13.7万円 | 6.4万円 |
会社の健康保険・厚生年金に入っている人(前に国民健康保険だった期間の滞納が残る人や、家族の国民健康保険の分を世帯主として納める人など。給料から健康保険・年金の保険料が引かれます)
| 月給 | 一人暮らし | 家族3人 |
|---|---|---|
| 20万円 | 4.0万円 | 0円 |
| 25万円 | 7.1万円 | 0円 |
| 30万円 | 10.3万円 | 3.0万円 |
※ 上限の額です。
老齢の年金も、給料と同じ式で、守られる額が決まっています(国税徴収法77条)。国民健康保険の税(市区町村によって、税か料で集めています。節1)の滞納で、この式の額を除いて老齢の年金を差し押さえた例があり、この差し押さえへの不服の申立て(審査請求)について、市の審査会は、申立てを認めない判断を示しました(伊丹市・令和2年)。障害の年金と遺族の年金は、差し押さえが禁止されています。
ただし、給料や年金が口座に振り込まれたあとは、原則として、この守りは引き継がれません。 最高裁(平成10年)は、この考え方を示した高裁の判断を認めています。一方で、給料が振り込まれた直後(同じ日や2日後)の口座の差し押さえを、実質的に給料そのものを差し押さえたのと同じだとして、違法とした判決があります(下の節1)。
払えないと分かったときは、市区町村の窓口で減免や徴収の猶予を申請できます(国民健康保険法77条・地方税法717条・15条など。申請の時期や、認められるかは、市区町村の条例と判断によります)。
では、口座に入ったお金は、いつでも全部取られるのでしょうか?
1 口座に入ったお金:裁判所が違法とした差し押さえと、そうでなかった差し押さえ
国民健康保険は、市区町村によって「国民健康保険税」か「国民健康保険料」で集めています(料で集める市区町村の加入者は、全体の約47%で、東京23区など)。差し押さえのやり方は、税も料も同じで、国税徴収法のやり方で行います(出典は後半)。違うのは根拠の法律と、払えないときの救済の条文です(猶予・解除の条文の違いは節5)。払わずにいると請求される期間(時効)も違い、税は法定納期限の翌日から5年(地方税法18条)、料は請求できる時から2年(国民健康保険法110条)です。どちらも、督促で時効が更新されます。この節の判決が料の滞納にも当てはまるかは、判決からは言えません(下の2)。自分の市区町村がどちらかは、国民健康保険の通知書の題で分かります。宇都宮市は「国民健康保険税納税通知書」、名古屋市は「国民健康保険料納入通知書」です(各市の公式ページ)。「納入通知書」の語は税の市の通知書の1枚目にも出るので、決め手は題の「税」「料」の字です。ここで取り上げる4件の判決のうち、国民健康保険が滞納の元に入っているのは前橋地裁の1件で、ほかは国税・固定資産税・市県民税の差し押さえです。
口座に振り込まれたあとの扱いは、条文ではなく、裁判所の判決で線が引かれています。4件の判決は、どれも、その差し押さえが実質的に、差し押さえを禁じられた給料や年金そのものを差し押さえたのと同じと言えるかを見ています。前橋地裁と東京高裁(2018年)は、役所がそれを意図していたかで判断しました。
違法とされた例
- 前橋地裁・2018年1月31日。市県民税と国民健康保険税の滞納で、市が預金口座を差し押さえました。差し押さえの日は2回とも、給料(と賞与)が振り込まれた日で、前日の残高は0円でした。裁判所は、預金になった給料は原則として差し押さえ禁止の性質を引き継がない、という考え方を前提にしたうえで、これらの差し押さえは、実質的に給料そのものを差し押さえることを意図したものだったとして、違法としました。市に12万6,226円と5万5,000円の支払いを命じました。市は控訴せず、判決は確定しています(日本司法書士会連合会の声明による)。
- 大阪高裁・2019年9月26日。国税(所得税)の滞納で、給料が振り込まれた2日後に、預金口座を差し押さえた処分です。一審の大津地裁(2019年2月7日)は適法としましたが、高裁は、給料が預金になっても、実質的に差し押さえを禁じられた給料を受け取る権利を差し押さえたのと同じとみなせる場合は違法になる、という考え方で判断しました。そのうえで、給料から差し押さえられる範囲を超えた部分を違法とし、国に2万4,404円の支払いを命じました(判決は確定)。
違法とされなかった例(年金が入った口座)
- 東京高裁・2018年12月19日(税理士向けの解説記事によると)。固定資産税2,000円の滞納で、年金(8万9,616円)が振り込まれた日に、その口座から2,000円を差し押さえた事案です。一審(前橋地裁・2018年2月28日。上の事件とは別の事件)は違法としましたが、高裁はこれを取り消し、納税者の訴えを退けました。理由は、市が預金の大部分が年金だと認識していたとはいえず、年金自体を差し押さえることを意図したとまでは認められない、また、2,000円が、すぐに生活に困るおそれのある額とは言えない、というものです。
- 東京高裁・2022年10月26日(弁護士の解説記事によると)。市県民税83,000円の滞納で、預金のもとになったお金は、年金と年金生活者支援給付金でした。高裁は、差し押さえた預金が、差し押さえを禁じられた年金を受け取る権利を差し押さえたのと同じとはいえないとして、差し押さえたお金を返すよう求めた納税者の訴えを退けました(一審の千葉地裁も退けました)。
判決から言えることが、2つあります。
- 給料が振り込まれた日の直後の差し押さえは、違法になりうると言えます。給料が入った口座だからといって、差し押さえが有効とは限りません。
- 年金が入った口座でも、守られなかった例があると言えます。年金が入った口座なら必ず守られる、とは言えません。
判決からは言えないことが、3つあります。
- 何日後までの差し押さえが違法になるかは、判決から言えません。違法とされたのは、同じ日と2日後の2例だけです。だから「振り込みから◯日たてば大丈夫」とも、「◯日以内なら取り戻せる」とも言えません。
- 国民健康保険「料」だけの滞納の場合は、判決から言えません。違法とされた2件の滞納の元は、前橋が市県民税と国民健康保険「税」、大阪高裁が国税で、国民健康保険「料」だけの滞納で違法とした判決は、探した範囲では見つかっていません。差し押さえのやり方は同じでも、料だけの滞納を裁いた判決が無いので、料で集める市区町村に住む人が、この2件を同じように当てはめられるとは言えません。
- 給料が振り込まれた預金なら必ず取り戻せるかは、言えません。大阪高裁の事件は、一審(大津地裁)が適法とし、高裁が違法としました。裁判所によって判断が分かれたので、「給料が入った預金の差し押さえは違法になる」とは言い切れません。
2 給料:差し押さえてはいけない額の式と、月給20万円の当てはめ
結論の表の額を、式に当てはめて確かめます。式の中身は、次の5つです(国税徴収法76条・同施行令34条)。
- ① 所得税(給料から源泉徴収される分)
- ② 住民税(給料から天引きされる分)
- ③ 社会保険料(給料から引かれる健康保険・年金など)
- ④ 生活に必要な額として政令で決めた額:本人10.7万円+生活費を共にする家族1人につき4.8万円
- ⑤ 給料から①〜④を引いた残りの20%(④の2倍が上限)
①〜③は、給料から実際に引かれる額です。国民健康保険の保険料(税)は給料から引かれないので、国民健康保険に入っている人の③は0円になります。
まず、月給20万円・一人暮らしの当てはめ(令和8年中の給料の月額で計算した試算。単位は円)
| 国民健康保険に入っている人 | 会社の健康保険・厚生年金に入っている人(国民健康保険の滞納が残っている。世帯主として家族の分を納める人を含む) | |
|---|---|---|
| ① 所得税 | 5,000 | 4,000 |
| ② 住民税 | 8,000 | 8,000 |
| ③ 社会保険料 | 0 | 30,000 |
| ④ 生活に必要な額 | 107,000 | 107,000 |
| ⑤ 残りの20% | (200,000− | (200,000− |
| 差し押さえてはいけない額(①〜⑤の合計) | 136,000 | 160,000 |
| 差し押さえられる額の上限(月給−上の合計) | 64,000 | 40,000 |
(①〜⑤の金額は千円未満を切り上げるので、会社の健康保険・厚生年金に入っている人の⑤は10,200円が11,000円になります。)
夫婦+子1人(15歳以下)の月給20万円は、④が10.7万円+4.8万円×2人=20.3万円で、①〜④だけで給料の20万円を超えます。国民健康保険に入っている人の場合は、3,000+5,000+0+203,000=211,000円。差し押さえられる額は0円です。
月給25万円・30万円の行と、①〜⑤の内訳は、後半の「前提と方法」にあります。
3 年金:老齢の年金は給料と同じ式、障害・遺族の年金は差し押さえ禁止
年金の差し押さえは、年金の種類で扱いが分かれます。
- 老齢の年金:国民年金法24条と厚生年金保険法41条は、年金を受け取る権利は差し押さえられないと定めています。ただし老齢の年金は、国税の滞納処分と、それと同じやり方で行う処分のときは、差し押さえることができます(ただし書き)。そのときも、国税徴収法77条で老齢の年金を給料とみなし、76条の式で守られる額は差し押さえられません。
- 障害の年金と遺族の年金:ただし書が付いていないので、差し押さえは禁止です。
4 差し押さえは年に何件起きているか
ここまでは差し押さえの決まりを見てきました。実際に、差し押さえはどれだけ行われているのでしょうか。市町村が運営する国民健康保険について、厚生労働省の集計では、次のように推移しています。
| 年度 | 差押世帯数 | 差押金額 | 差し押さえをした市町村など |
|---|---|---|---|
| 令和3年度 | 287,840件 | 649.5億円 | 1,599(93.2%) |
| 令和4年度 | 303,746件 | 659.6億円 | 1,602(93.4%) |
| 令和5年度 | 327,401件 | 664.2億円 | 1,600(93.2%) |
| 令和6年度 | 338,709件 | 658.9億円 | 1,598(92.9%) |
差し押さえをされた世帯は、令和3年度の287,840件から令和6年度の338,709件まで、毎年増えました。差押金額は、令和5年度の664.2億円から、令和6年度は658.9億円に減っています。この集計には、増えた理由は書かれていません。滞納している世帯の数(各年6月1日現在)は、平成28年の3,112,195世帯から、令和3年の2,080,550世帯、令和6年の1,829,802世帯へと減ってきましたが、令和7年(速報)は1,852,301世帯で、前の年より増えています。差押世帯数は年度の合計、滞納世帯数は6月1日現在の数で、数え方が違うので、滞納世帯のうち何割が差し押さえられたかは出せません。
5 払えないと分かったとき:法律に書かれている仕組み
「猶予」は、条文ごとに待つものが違います。徴収の猶予は納める時期を待つこと、換価の猶予は差し押さえた財産を売るのを待つこと、差し押さえの猶予は差し押さえそのものを待つことです。
- 保険料の減免・徴収の猶予:国民健康保険法77条は、市町村と組合が、条例や規約の定めるところにより、特別の理由がある人に、保険料を減免したり、徴収を猶予したりできると定めています。どんな場合が特別の理由に当たるかは、条文には書かれておらず、市区町村の条例で決まります。
- 税の徴収の猶予:国民健康保険「税」の場合は、地方税法15条で、災害や盗難、本人や生活費を共にする親族の病気・負傷、事業の廃止・休止、事業の著しい損失などで、一時に納付できないと認められるときは、申請に基づいて、1年以内の期間を限って猶予できます。
- 換価の猶予に伴う、差し押さえの猶予・解除:地方税法15条の5の3と15条の6の3は、市町村長が、差し押さえた財産を売って納税にあてるのを待つこと(換価の猶予)をする場合に、差し押さえによって生活の維持を困難にするおそれがある財産の差し押さえを、猶予したり解除したりできると定めています。国税も国税徴収法152条2項が同じ内容で、国税庁の通達は、給料が振り込まれた預金の差し押さえについて、生活の維持を困難にするおそれがある額は猶予や解除ができるとしています。申請による換価の猶予は、納期限から条例で定める期間内に申請します(15条の6第1項)。国民健康保険「料」について、この差し押さえの猶予・解除ができると書いた条文や国(総務省・厚生労働省)の通知は、探した範囲では見つかりませんでした。
- 滞納処分の停止(国民健康保険税):地方税法15条の7は、市町村長が、①滞納処分をすることができる財産がないとき、②滞納処分をすることで生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき、③所在と財産がともに不明なとき、のいずれかに当たると認めるときは、滞納処分を止めることができると定めています。②を理由に停止したときは、差し押さえた財産を解除しなければならず(3項)、停止が3年続くと、納める義務は消えます(4項)。国民健康保険「料」でも、市の決まりで同じように差し押さえの猶予や滞納処分の停止をしている市があります(例は後半)。
- 国の案内:厚生労働省は「災害、その他特別の事情により国民健康保険料(税)を納めることが困難な場合、国民健康保険料(税)の減免や納付猶予を受けられる場合があります」として、まず市区町村の国民健康保険の窓口に問い合わせるよう案内しています。
国民健康保険「税」の減免は、地方税法717条が、天災その他特別の事情がある場合などに、条例の定めるところにより認めています。国民健康保険「料」は国民健康保険法77条です。申請の時期や必要な書類は条例で決まり、市区町村によって違います。たとえば宇都宮市は、国民健康保険税の減免の対象を、申請の時にまだ納期限が来ていない税とし、減免を受けたい税の納期限までに申請するよう案内しています(市の案内ページ)。
後半(参照用)
言葉
- 差し押さえ(滞納処分):税や保険料を納期限までに納めない人に対して、役所が、督促をしたうえで、その人の財産(給料・預金・年金を受け取る権利など)を、法律に基づいて処分すること
- 特別徴収・普通徴収:住民税などを、給料から天引きして会社が納める方法(特別徴収)と、本人が自分で納める方法(普通徴収)
- 差押世帯数:厚生労働省の集計の欄の名前。単位は原文のとおり「件」と書かれています
前提と方法
- 表の前提(結論の表・節2):令和8年中の給料の月額で計算しています(所得税は令和8年11月までの給料に当てはまる額。国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」p.1。④の額は令和8年4月1日以降の給料に当てはまります)。令和9年1月以降は、国民健康保険に入っている人は1,000〜2,000円ほど、会社の健康保険の人は1,000〜3,000円ほど、表の額より大きくなります。令和8年12月は年末調整の精算があります。賞与は含めません
- 所得税(①):国税庁「令和8年分源泉徴収税額表(月額表)」の甲欄の実額(扶養親族等0人・1人の行)。国民健康保険に入っている人は、社会保険料が給料から引かれないので、①は会社の健康保険の人より大きくなります。家族3人の①が小さいのは、源泉徴収税額表が配偶者(収入なし)の分を引く列(扶養親族等1人)で見るからです。月給20万円なら、0人の列は4,340円、1人の列は2,730円(千円未満切り上げで5,000円・3,000円)。15歳以下の子は数えません
- 住民税(②):給料から天引きされる(特別徴収)前提の月額。自分で納めている人(普通徴収)は、通達で第2号の金額が「ない」とされ、②は0円で、差し押さえられる額の上限は、一人暮らしで月給20万・25万・30万円の順に 7.0万円・10.8万円・14.8万円です
- 社会保険料(③):会社の健康保険・厚生年金の人は、協会けんぽ(東京)・厚生年金・雇用保険(月給の0.5%)の本人負担分で、20万・25万・30万円の月給の順に 30,000円・39,000円・44,000円。国民健康保険に入っている人は、給料から引かれる社会保険料を0円としています。雇用保険にも入っている人は、雇用保険料を③に入れると、上限が1,000〜2,000円ほど小さくなります(一人暮らしは1,000円、家族3人の月給25万・30万円は2,000円)
- 端数:国税庁の通達どおり、①〜⑤の各額は千円未満を切り上げ、給料の額は千円未満を切り捨てます。⑤は、切り上げ済みの①〜④を引いた残りの20%を出してから切り上げます
- 世帯:家族3人は、本人のほかに、生活費を共にする配偶者と15歳以下の子1人です(15歳以下の子は源泉徴収の扶養親族の数に入れません)
- 国民健康保険に入っている人の内訳(単位は円)
以下の3つの表の右端の「上限額」は、差し押さえられる額の上限です。
一人暮らし
| 月給 | ① | ② | ③ | ④ | ⑤ | 上限額 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 200,000 | 5,000 | 8,000 | 0 | 107,000 | 16,000 | 64,000 |
| 250,000 | 7,000 | 10,000 | 0 | 107,000 | 26,000 | 100,000 |
| 300,000 | 8,000 | 13,000 | 0 | 107,000 | 35,000 | 137,000 |
家族3人
| 月給 | ① | ② | ③ | ④ | ⑤ | 上限額 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 200,000 | 3,000 | 5,000 | 0 | 203,000 | 0 | 0 |
| 250,000 | 5,000 | 7,000 | 0 | 203,000 | 7,000 | 28,000 |
| 300,000 | 7,000 | 10,000 | 0 | 203,000 | 16,000 | 64,000 |
- 会社の健康保険・厚生年金に入っている人の内訳(一人暮らし・単位は円)
| 月給 | ① | ② | ③ | ④ | ⑤ | 上限額 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 200,000 | 4,000 | 8,000 | 30,000 | 107,000 | 11,000 | 40,000 |
| 250,000 | 5,000 | 10,000 | 39,000 | 107,000 | 18,000 | 71,000 |
| 300,000 | 7,000 | 13,000 | 44,000 | 107,000 | 26,000 | 103,000 |
家族3人の行(0円・0円・30,000円)は、結論の表のとおりです
- 判決の選び方:給料または老齢の年金が振り込まれた口座の差し押さえで、判決文か公的機関の資料で、結論を確かめられたもの。児童手当(広島高裁松江支部 2013年・違法)など、別の法律で守られるお金の判決は入れていません
- 試算の位置づけ:上の表は当メディアの試算で、役所の公表値ではありません。国税徴収法76条の式は法律に書かれたもの、①〜③に当てた金額は試算です
- 判決の出所:前橋地裁(2018年1月31日)は判決文(画像)を読みました。確定は日本司法書士会連合会の会長声明(2018年6月19日)によります。大阪高裁(2019年9月26日)は国税庁の税務訴訟資料の判決文です。東京高裁(2018年12月19日・2022年10月26日)は、判決文ではなく、税理士向けニュース・弁護士の解説記事によります。2022年の判決の種別は、有斐閣Online(社会保障判例百選47事件)が「判決」と記載しています。2018年の理由の引用は、税務大学校論叢101号(54〜55頁)に載った高裁判決の引用によります。最高裁平成10年2月10日の判決理由は、全国労働基準関係団体連合会の判例検索に載った転記(「原審の判断は、正当として是認することができ」)によります。札幌高裁の理由は、同じ判例検索の抜粋と、岩手大学の論文(西牧正義、2005年)の引用によります
- 口座に入ったあとの扱い(結論)の出所:最高裁平成10年2月10日(第三小法廷。信用金庫の相殺の事件)が是認した札幌高裁の判断:年金などが口座に振り込まれると、受給者の預金債権になって一般財産になり、差押禁止債権としての属性を承継しているものではない(判決理由の抜粋=全国労働基準関係団体連合会の判例検索。「原則として」の言い方は一審〔釧路地裁北見支部〕の理由と西牧論文による)。国税庁 国税徴収法基本通達76条関係11(国税の滞納について。預金は給料の差し押さえ禁止に含まれず、生活の維持を困難にするおそれがある額は差し押さえを猶予・解除できる)
- 税目ごとの滞納処分の条文(節1):市町村民税・固定資産税・国民健康保険税の滞納処分は、地方税法(331条6項・373条7項・728条7項)が「国税徴収法に規定する滞納処分の例による」と定めています(個人の県民税は、41条1項で市町村民税と併せて市町村が徴収します)。国税の差し押さえは、国税徴収法そのものが定めています
- 地方税法の語と自治体の例(節5):15条の5の3・15条の6の3の「市町村長」は、条文では「地方団体の長」です。国民健康保険税は706条で「水利地益税等」に含まれ、減免を定めた717条の対象です。国民健康保険「料」では、神戸市が「保険料」に換価の猶予を案内しています。豊中市は、滞納処分の停止を地方税法15条の7に当てはめた市の決まり(要綱)で運用しています
- 世帯主として納める人(結論の表):自分は会社の健康保険に入っていても、家族が国民健康保険に入っていれば、世帯主が家族の分を納める人になります(国民健康保険法76条1項・地方税法703条の4第38項)
- 税と料の条文のたどり方(結論の箱):国民健康保険法79条の2(保険料は地方自治法231条の3第3項の「法律で定める歳入」)→地方自治法231条の3第3項(督促後に納めなければ「地方税の滞納処分の例により」処分できる)。総務省の通知(総税企第55号・平成19年3月27日)は、保険料の滞納処分にも国税徴収法が及ぶと書いています。加入者の割合は、令和7年3月31日現在(総務省「市町村税課税状況等の調」)で、税52.6%・料47.4%です
断定できないこと
- 実際にいくら差し押さえるか:表は上限で、実際の額を示す資料は見つかっていません
- 国民健康保険「税」の差し押さえの猶予・解除は、地方税法15条の5の3・15条の6の3で確認できました。国民健康保険「料」に同じ仕組みがあるか、国税庁の通達(預金の差し押さえの猶予・解除)を国民健康保険の滞納に同じように使うと書いた国の文があるかは、探した範囲では見つかっていません
- 国民健康保険の滞納処分が、年金のただし書の「国税の滞納処分(その例による処分を含む)」に当たると国が明言しているか。国民健康保険「料」の滞納で老齢の年金を差し押さえた例があるか(どちらも探した範囲では見つかっていません)
- 給料が振り込まれてから何日後までの差し押さえが違法になるか。国民健康保険「料」だけの滞納で口座の差し押さえを違法とした判決があるか
- 東京高裁(2018年12月19日)の判決が、上告・上告受理申立てのあと、どうなったか(結果が書かれた資料は見つかっていません)
- 差し押さえの件数が令和3年度から増えた理由
出典
〔1〕国税徴収法76条・77条(e-Gov法令検索:https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000147 )/国税徴収法施行令34条(同・e-Gov法令検索)/国民健康保険法77条・79条の2(https://laws.e-gov.go.jp/law/333AC0000000192 )/国民年金法24条(https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000141 )/厚生年金保険法41条(https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115 )/地方税法15条(https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226 )/地方自治法231条の3第3項(e-Gov法令検索)。いずれも2026年10月2日に取得した現行の条文
〔2〕国税庁 国税徴収法基本通達 第76条関係「給与の差押禁止」:https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/chosyu/05/01/06/076/01.htm /国税庁「令和8年分 源泉徴収税額表(月額表)」・「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」/財務省「国税徴収法施行令の一部を改正する政令要綱」(令和8年度税制改正。https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/seirei/youkou/97_choshu.pdf )
〔3〕厚生労働省「国民健康保険(市町村国保)の財政状況について」令和3年度版(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001121231.pdf )・令和4年度版(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001283515.pdf )・令和5年度版(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001546569.pdf )・令和6年度版(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001744658.pdf )。p.12(滞納世帯数)・p.14(滞納処分の実施状況)
〔4〕厚生労働省「国民健康保険の保険料・保険税について」:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21517.html
〔5〕前橋地裁 平成30年1月31日判決(平成28年(行ウ)第5号。https://lg-law.jp/document/pdf/300131.pdf )/日本司法書士会連合会の会長声明(2018年6月19日)/大阪高裁 令和元年9月26日判決(税務訴訟資料 2019-25。https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/choshu/2019/pdf/2019-25.pdf )/東京高裁 平成30年12月19日・令和4年10月26日の判決の解説(税理士ニュース〔新日本法規〕・エス・タックス・弁護士 渡邊博己 note)/税務大学校論叢101号(令和2年6月)
〔6〕伊丹市 国民健康保険税の審査会答申 令和2年度答申第2号(https://www.city.itami.lg.jp/material/files/group/109/20210910-3IGK.pdf )/全国労働基準関係団体連合会 労働基準判例検索 北見信用金庫事件(最高裁 https://www.zenkiren.com/Portals/0/html/jinji/hannrei/shoshi/07080.html ・札幌高裁 ID 07202)/西牧正義「差押禁止債権を原資とする預金債権の差押え」アルテス リベラレス(岩手大学人文社会科学部紀要)第77号(2005年12月)p.65〜76/神戸市「国民健康保険料の納付の猶予制度」(https://www.city.kobe.lg.jp/a52670/kurashi/support/insurance/yuuyoseido.html )/豊中市「国民健康保険料、介護保険料及び後期高齢者医療保険料に係る滞納処分執行停止に関する要綱」/総務省 総税企第55号(平成19年3月27日)/総務省「市町村税課税状況等の調」/宇都宮市「国民健康保険税の減免制度」(ページID1024695・更新日 令和6年3月8日。https://www.city.utsunomiya.lg.jp/kurashi/hokennenkin/kokuho/1024695.html )/地方税法15条の7・15条の5の3・15条の6の3・706条1項・717条(e-Gov)
〔7〕宇都宮市「国民健康保険税納税通知書の見方」(更新 令和8年6月23日。https://www.city.utsunomiya.lg.jp/kurashi/hokennenkin/kokuho/1024692.html )/名古屋市「国民健康保険料納入通知書・国民健康保険料額決定通知書」(https://www.city.nagoya.jp/kurashi/hoken/1011736/1011737/1040310.html )/国民健康保険法76条1項ただし書・110条(https://laws.e-gov.go.jp/law/333AC0000000192 )/地方税法18条(https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226 )。いずれも、2026年10月8日に取得した現行の条文です。