賃金の上昇が物価に追いついたらしいけど、本当?
この記事で分かること
- ガソリン代と教育費は、大都市と小さな市町村で逆を向く(2024年・二人以上の世帯)
- ニュースの「実質賃金+1.4%」が何を表す数字か
- 46都道府県では、都道府県の実質賃金を都道府県の統計で見られる
「実質賃金がプラスになった」というニュース、見ましたか?
ニュースの「実質賃金」は、給料が物価に比べてどれだけ伸びたかを表す数字です。+1.4% は「給料の伸びが物価の伸びを上回った」という意味で、給料が1.4%上がったということではありません。
2026年5月(速報)は、給料が +3.2%、消費者物価指数(持ち家の分を除いた物価。2020年基準)が +1.7%、実質賃金が +1.4% でした(いずれも厚生労働省・総務省の公表値)。
2026年5月の伸び率で見れば、給料の伸びが物価の伸びを上回ったのは本当です。
暮らしが楽になった感じがしない、という人もいると思います。
数字と実感がずれる理由として考えられる材料が、少なくとも2つあります。
- ① +1.4% は、前の年の同じ月と比べた伸びです。2026年は1〜5月とも、前の年の同じ月よりプラスでした(+0.7〜+2.0%)。ただ、その前の2023〜2025年は、3年続けてマイナスでした(2023年 −2.5%・2024年 −0.3%〈確報値〉・2025年 −1.3%)。前の年と比べた伸び率だけでは、それまでに下がった分が戻ったかは見えません。(2節)
- ② この +1.4% を出すのに使った物価(消費者物価指数。+1.7%)は、全国の平均的な買い物かごの値上がりで測ったものです。買い物かごの中身は、街の大きさで違います。
給料の +3.2% も全国の平均で、人によって違います。①は2節、②は1節で見ます。
②の例です(2024年・二人以上の世帯・都市階級別の平均)。
- ガソリン(年間):大都市 44,701円/小都市B・町村(人口5万未満の市と町村) 100,908円
- 教育費(月額):大都市 14,597円/小都市B・町村 7,438円
大都市はガソリンが少なく、教育費が多い。小都市B・町村は、その逆です。ガソリンは年間、教育費は月額の金額です。
※ 買い物かごの中身が平均と違えば、その暮らしの物価の上がり方は、平均より高くも低くもなりえます(推論。統計が測った値ではありません)。
あなたの家のガソリン代と教育費は、二人以上の世帯の全国平均(2024年)より上ですか、下ですか?
1. ガソリン代と教育費は、大都市と小さな市町村で逆を向く
冒頭の2つの数字は、都市階級(大都市/中都市/小都市A/小都市B・町村)の4区分の平均です(2024年・二人以上の世帯)。
ガソリンの年間支出金額 — 都市階級別(円・年間)(品目分類 第4-1表)
| 都市階級 | ガソリン年間支出 |
|---|---|
| 大都市 | 44,701円 |
| 中都市 | 69,996円 |
| 小都市A | 84,283円 |
| 小都市B・町村 | 100,908円 |
全国平均は70,887円。中間の区分も含めて、町村に近いほど連続的に大きくなります。
出典:家計調査 二人以上の世帯 詳細結果表(2024年)品目分類 第4-1表(出典一覧4)
教育費 — 都市階級別(円・月額)(用途分類 第1-1表)
| 都市階級 | 教育費(月額) |
|---|---|
| 大都市 | 14,597円 |
| 中都市 | 12,485円 |
| 小都市A | 9,925円 |
| 小都市B・町村 | 7,438円 |
全国平均は11,703円。ガソリンと向きが逆で、大都市ほど大きくなります。
出典:家計調査 二人以上の世帯 詳細結果表(2024年)用途分類 第1-1表(出典一覧4・脚注1)

ガソリンは年間、教育費は月額で単位が違います。見るのは、ガソリンは小都市B・町村寄り、教育費は大都市寄り、という向きです。
都市階級は、大都市=政令指定都市と東京都区部/中都市=それ以外の人口15万以上の市/小都市A=人口5万以上15万未満の市/小都市B・町村=人口5万未満の市と町村(人口は2020年国勢調査時)です。これは二人以上の世帯の4区分の定義で、単身世帯の表(小都市A・B・町村を合算した3区分)とは別です。
あなたの位置は、二人以上の世帯の全国平均(2024年)を物差しに探せます。
- ガソリン:年間10万円なら、全国平均(70,887円)の約1.4倍。大都市の平均(44,701円)なら、全国平均の約0.6倍。
- 教育費:月11,703円(全国平均)を上回るなら平均より上、下回るなら平均より下。
世帯のかたちでも変わります。単身世帯の教育費は月9円(単身世帯 第1表)。単身世帯では、教育の物価はほぼ関係しません。なお単身世帯には、高齢の単身と若い単身が混ざっています。
出典:家計調査 単身世帯 詳細結果表(2024年)第1表(出典一覧5)
2. ニュースの「+1.4%」は、どう計算された数字か
ここからは、報じられた数字の側から見ます(2026年5月の賃金と消費者物価指数)。給料は、一人あたり現金給与総額(事業所規模5人以上)の前年同月比 +3.2%(311,165円)です。
2026年7月、こんな見出しが並びました。
- 「5月の実質賃金1.4%増、5カ月連続プラス 賃上げが波及」(日本経済新聞、2026年7月7日)
- 「実質賃金5カ月連続プラス 21年以来、5月1.4%」(共同通信配信、2026年7月7日)
- 「5月実質賃金、5カ月連続プラス 値上げ再燃で、秋以降マイナスも」(時事通信、2026年7月7日)
実質賃金は、名目賃金指数(給料の指数)を物価指数で割った指数の前年比です(公表値)。毎月勤労統計の実質賃金(主系列)は、消費者物価指数の**「持家の帰属家賃を除く総合」**(持ち家の分を除いて計算した物価)を使います(付表 注2)。消費者物価指数の「総合」で割ると、実質賃金は +1.7% です。2026年5月分(いずれも2020年基準)で並べるとこうです。
| 割る消費者物価指数(その伸び) | 実質賃金 |
|---|---|
| 消費者物価指数の総合(+1.5%) | +1.7% |
| 持家の帰属家賃を除く総合(+1.7%・主系列) | +1.4% |
出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026年5月分結果速報」第1表・付表(参考の消費者物価指数は総務省公表値、注3)。消費者物価指数は2020年基準。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r08/2605p/dl/pdf2605p.pdf
主系列の物価指数は消費者物価指数の総合より伸びが高いぶん、実質賃金は低めに出ます。
+1.4% は、前の年の同じ月と比べた単月・速報の数字です。2026年は、1月 +0.7%・2月 +2.0%・3月 +1.4%・4月 +2.0%・5月 +1.4% と、5月分まで各月プラスでした(5月分速報の時点)。年次では、2023年が −2.5%、2024年が −0.3%、2025年が −1.3% でした。前の年と比べた伸び率だけでは、それまでに下がった分が戻ったかは見えません。
出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026年5月分結果速報」付表(2026年1〜5月は前年同月比、年次は年平均前年比。いずれも実質賃金・持家の帰属家賃を除く総合で実質化)。
消費者物価指数の計算では、ガソリンに全体の約1.8%、教育に約3.0%の重みが付いています(2020年基準・全国。1万分比でガソリン182、教育304、うち授業料等213)。全国の物価指数は、全国で1つの指数として作られています。地域別の指数は、別に公表されています(出典一覧9・11)。
出典:総務省統計局「2020年基準消費者物価指数 品目情報一覧」。
https://www.stat.go.jp/data/cpi/2020/kaisetsu/zuhyou/4-1.xlsx
3. あなたの都道府県の実質賃金を見る
都道府県ごとの実質賃金は、46都道府県の統計にあります(1節は街の大きさ別、ここは都道府県別です)。多くは、県庁所在市などの物価指数で割っています。
毎月勤労統計の地方調査(都道府県ごとの毎月勤労統計)は、各都道府県が集計・公表しています(内訳と確かめ方は後半)。見る手順は次のとおりです。
- 都道府県のページで「実質賃金指数」の表を開く(現金給与総額・事業所規模5人以上。都道府県によって事業所規模5人以上と30人以上が並びます)。
- 前年同月比の列を見る。
- 無ければ、同じ月の前年の指数と比べる。
都道府県の数字は、その都道府県の2020年からの変化です。そう割っている都道府県の数字は、同じ都道府県の町村の物価指数とは別の物価指数で割った数字です。都道府県どうしの水準は比べません(詳しくは後半)。
47都道府県のリンク一覧は、後半の出典にあります。
後半(参照用)
参考:2026年6月の消費者物価指数では、授業料等とガソリンが物価の伸びを押し下げている
2026年6月の消費者物価指数(2020年基準)では、授業料等が −0.18ポイント、ガソリンが本系列で −0.15ポイント、全体の伸びを押し下げています。寄与度とは、ある品目が消費者物価指数全体の前年比を何ポイント動かしたかで、本系列は消費者物価指数の公表値そのものです。
- ガソリン … 指数の本系列での寄与度は −0.15ポイント(前年同月比 −7.0%)。これとは別に、暫定税率廃止・政策効果を含めた試算値(参考のための概算。本系列ではない)では −0.62ポイントという数字もあります。
- 授業料等 … 前年同月比 −10.6%、寄与度 −0.18ポイント(うち私立高校授業料 −68.8%)。高校授業料の無償化拡充が反映された、指数の本系列の値です。
出典:総務省統計局「2020年基準 消費者物価指数 全国 2026年6月分」(2026-07-24公表)。恒久版はe-Stat(政府統計コード 00200573)。
※ 賃金データは2026年5月分、この寄与の内訳は2026年6月分です。月が違うため、同じ月の数字として合算していません。
押し下げたのは教育のうち「授業料等」(私立高校授業料を含む)で、1節の教育費全体より範囲が狭い区分です。
電気・ガスなど他の政策の寄与と、全政策を合わせてどの世帯がどれだけ得かは、この記事では計算していません。賃上げと物価の鈍化のどちらが実質賃金プラスの主因かを分けた要因分解は、公表統計には見当たりません。内閣府や日本銀行の資料には政策による物価押し下げの試算がありますが、統計の公表値ではなく、機関による分析・試算です。
都道府県の実質賃金:内訳と読み方(2026年9月25〜26日に確認)
47のうち46の都道府県に、実質賃金の表があります。
- 今の都道府県の資料に、県庁所在市など(東京都は区部、北海道は道全体)の物価指数で割ると書いてある:37
- 過去の年報などに県庁所在市の物価指数と書いてあり、当メディアの逆算でも県庁所在市の物価指数と合う:7
- 地域の記載は見つからないが、当メディアの逆算では県庁所在市の物価指数と合う:2(青森県・鳥取県。鳥取県は物価指数の種類〈持家の帰属家賃を除く総合〉までは同県の説明にある)
- 熊本県:令和8年6月分・令和7年年平均の月報とExcelには見当たらない
「当メディアの逆算」の方法は、下の「前提と方法」(物価指数の逆算)にあります。逆算は、都道府県の表の名目賃金指数を実質賃金指数で割って、使われた物価指数を出し、公表されている物価指数と月ごとに照らしたものです(当メディアの計算)。合うことは、都道府県がその物価指数を使ったという都道府県の記載ではありません。
読み方
- 37都道府県の実質賃金指数は、その都道府県の名目賃金指数を、県庁所在市などの物価指数で割ったもの(ともに2020年=100)です。指数の水準(100に対する値)は、都道府県どうしで比べられません。それぞれの都道府県の2020年=100からの変化です。
- 前年比を全国やほかの都道府県と並べるときの違い:①物価指数(都道府県は県庁所在市などの物価指数、全国は全国の物価指数)②月(全国の+1.4%は2026年5月。都道府県の最新号は月が違うことがあります)③物価指数の種類(全国は「持家の帰属家賃を除く総合」。都道府県によっては、どの種類か書いていません)。
表で市名を書いた都道府県の物価指数は、県庁所在市など(北海道は道全体、東京都は区部)の物価指数で、同じ都道府県の町村の物価指数とは別です。同じ表に全国の参考値が並ぶ都道府県があります(岩手・山口・高知ほか)。都道府県の列を見てください。月の指数の水準は、月によって大きく動くことがあります。
- 「過去の資料・逆算で合う」「逆算で合う。記載なし」の意味は、下の「前提と方法」(物価指数の逆算)にあります。「過去の資料」は、保存した最新の月報・年報(出典一覧10)には書いておらず、それより前の版に書いてあるものです。原文で確認できた範囲で、全国の物価指数で割っていると書いてある都道府県は0です。逆算でも、全国の物価指数と全部の月で合った都道府県は0です。
- リンク先で、都道府県の月報・年報(実質賃金指数の表)を開けます。福島県は一覧のページが無いため、過去の結果のページにつないでいます。
- 見た資料:令和8年6月分(都道府県によって7月分)の月報と、令和6年または令和7年の年報・年平均のうち、保存したもの(PDF・Excel)です。
- 熊本県は、令和8年6月分の月報と令和7年年平均のPDF・Excel、長期時系列ページ、同県の別ページ(労働関係統計・暮らし向きデータ)に見当たりません。令和4年1月分から令和8年7月分までの月報と、平成23年から令和7年までの年平均にも見当たりません。
- 鳥取県は、同県の説明ページと月報令和8年7月に、実質賃金の算式(名目賃金指数÷各月の消費者物価指数〈持家の帰属家賃を除く総合〉×100)はありますが、どの地域の物価指数かの記載はありません。画像の月報令和8年7月(該当の頁)と年報令和7年(全35頁)を目で開いて確かめました。
用語
- 地方調査:都道府県が集計・公表する毎月勤労統計調査。
- 実質賃金指数:名目賃金指数を物価指数で割ったもの(2020年=100)。
- 持家の帰属家賃を除く総合:持ち家の分(帰属家賃)を除いて計算した物価。毎月勤労統計の実質賃金の主系列が使う。
- 寄与度:ある品目が消費者物価指数全体の前年比を何ポイント動かしたか。
- 本系列と試算値:消費者物価指数の公表値が本系列。試算値は、政策の効果を含めた参考の概算。
- ウェイト(1万分比):全体を1万としたときの各品目の重み。
- 都市階級:大都市/中都市/小都市A/小都市B・町村。地方区分(北海道・東北…)とは別の切り口。
前提と方法
- 時点:全国の賃金は2026年5月分速報(7月7日公表)、全国の消費者物価指数の内訳は2026年6月分(7月24日公表)、2024年の確報値と47都道府県の地方調査は2026年9月25〜26日に確認。5月分の賃金と6月分の内訳は合算していない。
- 年次の実質賃金は、いずれも「持家の帰属家賃を除く総合」で実質化・事業所規模5人以上・就業形態計(付表の年平均前年比。指数から計算し直していない)。2024年の −0.3% は確報値(速報は −0.2%)。消費者物価指数の「総合」で実質化すると同じ年は 0.0%。
- 47都道府県の調べ方:2026年9月25日に、各都道府県の月報・年報・統計課ページ・説明PDF・統計表Excelを開き、原本を保存。物価指数の原文は、保存した資料のテキストで照合しました(画像のPDF〈鳥取県〉は照合できていません)。都道府県の実質賃金の値どうし・都道府県と全国の値を並べて比べてはいません(9都道府県の名目賃金指数・実質賃金指数は、物価指数の逆算のためだけに使いました)。
- 月報と年報で書き方が違う都道府県:兵庫県(神戸市の記載は年報・概要PDFのみ)、香川県(高松市の記載は年報の概況PDFのみ)、秋田県(月報は秋田市、年報は地域名の記載なし)。
- 途中で物価指数を切り替えた都道府県:三重県(平成28年1月分から津市。以前は三重県の数値)。
- 2品目(ガソリン・教育)を選んだのは、2026年6月の消費者物価指数で物価の伸びを押し下げている品目を含むため(参考)。
- 支出:2024年平均・二人以上の世帯(単身は単身世帯の表)。ガソリンは年間、教育費は月額。
- 比較は都市階級の軸だけ。地方区分・世帯類型とは混ぜていない(単身は教育費の段落だけ)。
- 消費者物価指数は2020年基準。2026年7月分(2026年8月21日公表)から2025年基準に切り替わりました。この記事の数値は2020年基準です。
- 全国平均の教育費は、詳細結果表 11,703円と概況 11,705円で2円差(脚注1)。本記事は詳細結果表の値を使う。
物価指数の逆算(当メディアの計算、2026年9月26日)
対象:栃木・神奈川・滋賀・京都・長崎・宮崎・鹿児島・青森・鳥取の9都道府県。
- 材料:各都道府県の月報・年報の、現金給与総額・事業所規模5人以上・調査産業計の名目賃金指数と実質賃金指数(2020年=100)。2025年1月〜2026年6月の月次(滋賀は2024年の12か月も)と年平均。
- 式:逆算の物価指数=名目賃金指数÷実質賃金指数×100。指数は小数1桁に丸められているので、名目賃金指数・実質賃金指数それぞれ ±0.05 の幅で判定。比べる物価指数も小数1桁に丸められているので、その ±0.05 も見込みました。
- 比べた物価指数:県庁所在市・全国・地方の「持家の帰属家賃を除く総合」と「総合」(総務省統計局の消費者物価指数 2020年基準、e-Stat 統計表ID 0003427113。出典一覧11)。
- 結果:9都道府県すべてで、逆算した物価指数が県庁所在市の「持家の帰属家賃を除く総合」と、ほぼ全部の月で合いました。全国・地方・消費者物価指数の「総合」は、どの都道府県でも全部の月には合いませんでした。
- 9都道府県の月次174か月(8都道府県×18か月、滋賀は30か月)のうち、県庁所在市の物価指数と合わなかったのは4か月です:栃木県 2026年3月、鹿児島県 2025年7月と2026年3月、長崎県 2025年9月。物価指数の丸めを見込まないと、幅の外は6か月と年平均1つで、うち3つ(栃木県 2026年6月・京都府 2025年5月・神奈川県 2024年平均)は外れが0.03です。同じ表と式で、同じ計算ができます。
- 長崎県は、令和8年6月分 第9表に印字された物価指数が、長崎市の公表値と13か月中12か月一致しました。合わない1か月(2025年9月)は、長崎県の表の物価指数が114.5、e-Stat の長崎市が114.7です。
断定できないこと
- 実質賃金プラスの主因(要因分解が公表統計にない)。
- 支出の違いが、その家計の物価の伸びの違いになるか:推論(統計の値は下)。総務省統計局は、勤労者世帯の年間収入五分位階級別・世帯主の年齢階級別などの「世帯属性別指数」を公表していて、世帯属性ごとの差は品目ごとの支出の構成割合(ウエイト)の違いから出る、と説明しています〔出典18〕。2025年基準で、2026年5月の前年同月比(持家の帰属家賃を除く総合)は、勤労者世帯の年収五分位で +1.3%〜+1.6%(平均 +1.4%)。2025年の年平均は、年収五分位で第Ⅰ階級 +3.7%〜第Ⅴ階級 +3.1%(年収が低いほど大きい)、世帯主の年齢で 29歳以下 +3.1%・40代 +3.0%・60代 +4.1%・70歳以上 +4.3%。都市階級別(2020年基準)の2025年は +3.6%〜+3.9%(大都市 +3.6%・小都市B・町村 +3.9%)で、差は小さい。数字は統計局の指数から当メディアが計算(2026年10月5日)。
- 都道府県どうしの水準(高い・低い)は比べられない。
- 逆算で合うことは、都道府県がその物価指数を使ったという都道府県の記載ではない。
- 過去の資料の記載は、今も同じ物価指数を使っているという記載ではない。
- 県庁所在市の物価指数と合わない4か月:長崎県の1か月は、長崎県の表の物価指数が 114.5(公表値は 114.7)で、理由は長崎県の資料に書かれていません。ほかの3か月(栃木県 2026年3月、鹿児島県 2025年7月と2026年3月)は、都道府県の月報・Excelの注に、その月の物価指数の取り扱いの記載が見つかりません(実質賃金は消費者物価指数で割る、とあるだけ)。鹿児島県は年報令和6年の説明に「鹿児島市の持家の帰属家賃を除く総合」とあります。理由は都道府県に問い合わせないと分かりません。
- 青森県・鳥取県は、物価指数の地域の記載が見つからず、逆算だけです。青森県は、月報令和8年7月・令和7年平均(概要の Word を含む)・年報令和6年に、実質賃金に使う物価指数の記載がありません。鳥取県は、物価指数の種類は同県の説明にありますが、地域の記載はありません。
- 熊本県は、月報令和8年7月と令和7年年平均のPDF・Excelに実質賃金の表も物価指数の記載もありませんが、公表していないとは言えません。
- 世帯のかたちで割った実質賃金は、計算していません。e-Stat の消費者物価指数の統計表の題(2020年基準の年報2021〜2025年・2025年基準の月報2026年8月)に、世帯人員別・世帯類型別の指数の表はありません(世帯属性別は、総世帯・勤労者世帯の年間収入五分位・世帯主の年齢階級別。2020年基準の年報には住居の所有関係別〈持家・借家〉の10大費目指数があります)〔出典18〕。
- 2026年の各月プラスが、この先も続くかどうか:2026年5月分までの数字しか使っていないので、示せません。
- 他の政策の寄与と、全政策を合わせた世帯ごとの損得は、計算していません。内閣府の資料は、ガソリン・電気ガス・重点支援について、物価を押し下げる幅(ガソリン 通年▲0.3 ポイント程度・電気ガス 2026年2〜4月▲0.4 ポイント程度。いずれも内閣府の試算)と、1世帯あたりの平均額(重点支援1万円程度・電気ガス7,300円程度・ガソリン税廃止12,000円程度)を示しますが、世帯の属性別の損得は載っていません〔出典13〕。
- ガソリン・教育費以外の品目の支出の違いは、品目ごとには出していません。全品目で見た物価の伸びの違いは、上の世帯属性別指数(年収・年齢)と都市階級別の指数で示しました(都市階級では差が小さい)。
出典一覧
一次資料(統計の公表値・恒久参照)
- 厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026年5月分結果速報」(第1表・付表)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r08/2605p/dl/pdf2605p.pdf - 総務省統計局「2020年基準 消費者物価指数 全国 2026年6月分」(2026-07-24公表)/恒久版:e-Stat 政府統計コード 00200573
- 総務省統計局「2020年基準消費者物価指数 品目情報一覧(ウェイト)」
https://www.stat.go.jp/data/cpi/2020/kaisetsu/zuhyou/4-1.xlsx - 総務省統計局「家計調査(家計収支編)二人以上の世帯 詳細結果表 2024年」品目分類 第4-1表(統計表ID 000040247209)/用途分類 第1-1表(000040247064)
- 総務省統計局「家計調査(家計収支編)単身世帯 詳細結果表 2024年」第1表(統計表ID 000040246950)
- 総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2024年平均結果の概要」
https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_gaikyo2024.pdf - 総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2024年 家計調査の概要」Ⅱ(2) 地域区分(p.7)
https://www.stat.go.jp/data/kakei/2024np/pdf/gaiyou.pdf - 厚生労働省「毎月勤労統計調査(地方調査)」取りまとめページ(都道府県別の表と注)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/30-1a.html - 総務省統計局「2020年基準消費者物価指数の概要」(都市階級・地方・県庁所在市別の系列を作成)
https://www.stat.go.jp/data/cpi/2020/kaisetsu/pdf/1.pdf - 47都道府県の毎月勤労統計調査 地方調査(月報・年報)。使われた物価指数・資料・リンクの早見表(2026年9月25〜26日に確認):
| 都道府県 | 実質賃金の表 | 使われた物価指数(都道府県の資料の記載、または当メディアの逆算) | 資料(月報・年報・年平均) | リンク |
|---|---|---|---|---|
| 北海道 | あり | 北海道(道全体) | 月報・年報 | 一覧 |
| 青森県 | あり | 青森市(逆算で合う。記載なし) | 月報・年報 | 一覧 |
| 岩手県 | あり | 盛岡市 | 月報・年報 | 一覧 |
| 宮城県 | あり | 仙台市 | 月報・年報 | 一覧 |
| 秋田県 | あり | 秋田市(月報。年報は地域名の記載なし) | 月報・年報 | 一覧 |
| 山形県 | あり | 山形市 | 月報・年報 | 一覧 |
| 福島県 | あり | 福島市 | 月報 | 資料 |
| 茨城県 | あり | 水戸市 | 月報 | 一覧 |
| 栃木県 | あり | 宇都宮市(過去の資料・逆算で合う) | 月報・年報 | 一覧 |
| 群馬県 | あり | 前橋市 | 月報・年報 | 一覧 |
| 埼玉県 | あり | さいたま市 | 月報・年報 | 一覧 |
| 千葉県 | あり | 千葉市 | 月報・年報 | 一覧 |
| 東京都 | あり | 東京都区部 | 月報・年報 | 一覧 |
| 神奈川県 | あり | 横浜市(過去の資料・逆算で合う) | 月報・年報 | 一覧 |
| 新潟県 | あり | 新潟市 | 月報 | 一覧 |
| 富山県 | あり | 富山市 | 月報・年報 | 一覧 |
| 石川県 | あり | 金沢市 | 月報・年報 | 一覧 |
| 福井県 | あり | 福井市 | 月報・年平均 | 一覧 |
| 山梨県 | あり | 甲府市 | 月報・年平均 | 一覧 |
| 長野県 | あり | 長野市 | 月報・年平均 | 一覧 |
| 岐阜県 | あり | 岐阜市 | 月報 | 一覧 |
| 静岡県 | あり | 静岡市(以前の静岡県の数値は、遡って静岡市に改訂済み) | 月報 | 一覧 |
| 愛知県 | あり | 名古屋市 | 月報 | 一覧 |
| 三重県 | あり | 津市(平成28年1月分から。以前は三重県の数値) | 月報 | 一覧 |
| 滋賀県 | あり | 大津市(過去の資料・逆算で合う) | 月報・年報 | 一覧 |
| 京都府 | あり | 京都市(過去の資料・逆算で合う) | 月報 | 一覧 |
| 大阪府 | あり | 大阪市 | 月報・年報 | 一覧 |
| 兵庫県 | あり | 神戸市(年報・概要PDFのみ) | 月報・年報 | 一覧 |
| 奈良県 | あり | 奈良市 | 月報・年報 | 一覧 |
| 和歌山県 | あり | 和歌山市 | 月報・年報・年平均 | 一覧 |
| 鳥取県 | あり | 鳥取市(逆算で合う。物価指数の種類は同県の説明にあるが、地域の記載なし) | 月報・年報 | 一覧 |
| 島根県 | あり | 松江市 | 月報・年報 | 一覧 |
| 岡山県 | あり | 岡山市 | 月報(表紙のみ)・年報 | 一覧 |
| 広島県 | あり | 広島市 | 月報・年報・年平均 | 一覧 |
| 山口県 | あり | 山口市(全国の値も並記) | 月報・年報 | 一覧 |
| 徳島県 | あり | 徳島市 | 月報・年報 | 一覧 |
| 香川県 | あり | 高松市(年報の概況PDFのみ) | 月報・年報 | 一覧 |
| 愛媛県 | あり | 松山市(愛媛県の説明ページのみ) | 月報・年平均 | 一覧 |
| 高知県 | あり | 高知市 | 月報・年報 | 一覧 |
| 福岡県 | あり | 福岡市 | 月報 | 一覧 |
| 佐賀県 | あり | 佐賀市 | 月報 | 一覧 |
| 長崎県 | あり | 長崎市(過去の資料・逆算で合う) | 月報・年報 | 一覧 |
| 熊本県 | 見当たらない | — | 月報・年平均 | 一覧 |
| 大分県 | あり | 大分市 | 月報・年平均 | 一覧 |
| 宮崎県 | あり | 宮崎市(過去の資料・逆算で合う) | 月報・年報 | 一覧 |
| 鹿児島県 | あり | 鹿児島市(過去の資料・逆算で合う) | 月報・年報 | 一覧 |
| 沖縄県 | あり | 那覇市 | 月報・年平均 | 一覧 |
物価指数の逆算の材料(当メディアの計算に使ったもの)
- 総務省統計局 消費者物価指数(2020年基準)地域別 e-Stat 統計表ID 0003427113(県庁所在市・全国・地方。「持家の帰属家賃を除く総合」と「総合」)
- 7都道府県の過去の資料(県庁所在市の物価指数の記載)
- 栃木県:毎月勤労統計調査地方調査『調査の説明』令和3年 p4・令和元年 p4/令和4年確報 p21(第8表の注)
- 神奈川県:年報 平成29年分 p5・平成30年分 p5・令和元年分 p6・令和2年分 p6
- 滋賀県:令和4年平均『利用上の注意』p2/令和3年平均 概要 p1/令和2年報 第2章 注4(紙面 p.5)
- 京都府:京都府統計書 令和2〜6年版 12-3表 注5
- 長崎県:確報 令和6・5・4・3年(各12頁目)、令和2年・平成31年(各15頁目)、年報 平成30年(15頁目)
- 宮崎県:年報 令和5・6年 概要 p3/5人以上Excel「第4・5・6表」N3
- 鹿児島県:年報 令和6年・5年 11頁目(§7(2))
機関による分析・試算(統計の公表値ではない)
- 内閣府 経済財政諮問会議 提出資料「消費者物価の動向と経済対策の効果」(2025-12-05)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2025/1205_shiryo01.pdf - 日本銀行「経済・物価情勢の展望」(2026年4月)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2604b.pdf
報道(冒頭と2節で引用。「どう報じられたか」の裏づけ)
- 日本経済新聞「5月の実質賃金1.4%増、5カ月連続プラス 賃上げが波及」(2026-07-07)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA063TD0W6A700C2000000/ - 共同通信配信(nippon.com)「実質賃金5カ月連続プラス 21年以来、5月1.4%」(2026-07-07)
https://www.nippon.com/ja/news/kd1447007343943090898/ - 時事通信「5月実質賃金、5カ月連続プラス 値上げ再燃で、秋以降マイナスも」(2026-07-07)
https://sp.m.jiji.com/article/show/3817376
世帯属性別の物価指数(統計局の公表値)
- 総務省統計局「消費者物価指数の解説」(2025年基準)Ⅲ 3(3) 世帯属性別指数(p.6)
https://www.stat.go.jp/data/cpi/2025/kaisetsu/pdf/3-5.pdf(取得 2026-10-05。解説は初版〈令和8年7月〉で改訂されうる)/同「消費者物価指数(2025年基準)月報 2026年8月分」第7表 勤労者世帯年間収入五分位階級別中分類指数(月次)e-Stat ファイルID 000040501454:https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000040501454&fileKind=0 /同 都市階級別:e-Stat 統計表ID 0003427113(2020年基準)
脚注1:教育費の全国平均値は、詳細結果表(第1-1表)では 11,703円、概況では 11,705円と公表されています(2円差)。本記事は詳細結果表の 11,703円を用います。