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会社員だった人の年金の平均額は、昔より増えたのに、ここ25年は物価に届いていない

この記事で分かること

結論

会社員など、厚生年金に長く(原則20年以上)入っていた人(公務員・私学の先生の共済だけの人は除く)が実際にもらっている年金の平均は、1966年度末から2024年度末までの58年で、月約7,800円から月約15万円へ、約19倍になりました。同じ期間に、物価は約4.4倍です。

でも、ここ25年は違います。平均の月額は、1999年度末の約17.6万円を最大に下がり、2018年度末の約14.4万円を底に少し上がり、2024年度末は約15.0万円(1999年度末の約0.85倍)。その間に物価は約1.11倍なので、物価を除くと約0.77倍です。

これから受け取り始める人の額は、国の推計で見ます(節4)。法律が下限として書いているのは割合で(国のモデルの夫婦2人分の年金が、現役男子の手取り賃金の50%を上回る水準)、額ではありません。額は国の推計の見込みで、国のモデルの世帯の夫婦2人分で月 21.1〜22.6万円(2024年度の値段。賃金が伸びる前提)です。会社員などの厚生年金の保険料率は、2017年9月分から 18.3% で固定です。自分の額を動かせるのは、厚生年金に入る年数・給料・受け取り始める年齢です(節5)。

では、なぜここ25年は物価に届かなかったのか。資料で分かることは2つです(節3)。

  1. 毎年の改定が、物価に届かなかった。 すでに受け取っている人の額に毎年掛かる改定率は、25年分を掛け合わせると約1.01倍で、改定の基になる前年の物価の約1.07倍に届きません。届かなかった分は、賃金で改定した(または改定しなかった)年と、年金の伸びを抑える調整(マクロ経済スライド)の分です(物価より高く保った年の分と、それを縮めた年の分は、ほぼ打ち消し合います。節3)。
  2. 平均に入る人が変わった。 この平均は、その年に受け取っている人全員の平均で、同じ人の額を追ったものではありません。2001年度からは、64歳までは給料に比例する分(報酬比例部分)だけを受け取る人も平均に入るようになり、国も2000年度以前とは単純には比べられないと注記しています。65歳以上だけの平均が分かる2005年度末から見ても、物価を除くと約0.79倍で、1を下回ります。

では、この2つで、平均が物価に届かない差は、どこまで説明できるのでしょう?

1. 厚生年金に長く入っていた人の年金の平均は、58年で約19倍になった

問いに入る前に、結論の数字を国の表で確かめます。まず、実際に受け取っている額から見ます。見るのは、厚生年金の老齢年金を受け取る人の、1人あたりの平均月額です(国の統計。各年度の終わり、3月末時点の平均で、以下「年度末」)。国民年金は、20歳から60歳までの全員が入る年金で、そこから出る年金を基礎年金といいます(会社員も自営業も共通に受け取る1階部分)。厚生年金は、会社員などが、国民年金に上乗せで入る年金です。

厚生年金に長く入っていた人の年金の平均月額(8つの年度末)

年度末平均月額注
19667,826円
197014,272円
1980100,674円基礎年金が始まる前
1991150,522円新しい制度(基礎年金)で65歳になった人が初めて出た年度末
1999176,161円最大
2006162,301円
2018143,761円1999年度末より後の底
2024150,289円

(厚生年金の老齢年金〔旧法+新法〕・受給権者1人あたり平均・月額・名目。出所は前提と方法の1)

1966年度末の 7,826円が、2024年度末の 150,289円(約15万円)に。約19倍です。同じ期間に、物価(消費者物価指数。以下「物価」)は約4.4倍になりました。

増えた時期は、はっきりしています。1970年度末の 14,272円は、1980年度末の 100,674円と、10年で約7倍になりました(物価は約2.4倍)。この10年は、どちらの年度も基礎年金を含まない同じ範囲の平均です。

3つ、読み方の約束があります。

2. 平均の月額は1999年度末が最大で、2024年度末は約0.85倍。物価は約1.11倍

起点は2つです。1999年度末(平均月額 176,161円。最大の年)と、1991年度末(150,522円。新しい制度の人が65歳になり始めた年度末)。それぞれを、2024年度末の 150,289円と比べます。

物価を除いた年金 = 年金の倍率 ÷ 物価の倍率
1999年度末から:0.85 ÷ 1.11 = 0.77

1999年度末・1991年度末から2024年度末まで、年金と物価は何倍になったか

起点 → 2024年度末平均月額の倍率物価の倍率物価を除いた年金
1999年度末0.851.110.77
1991年度末1.001.170.85

(倍率はすべて「約」)

年金と同じ期間に、給料がどう動いたかも見ておきます。会社や役所から給料をもらう人(パートを含む)の1人あたりの給料の平均(毎月勤労統計の現金給与総額)は、1999年から2024年まで約1.00倍で、ほぼ横ばいです。

起点を変えても、物価を除いた年金は1を下回る向きは同じです(1991〜2006年度末のどの起点でも約0.77〜0.85倍。2018年度末からでも、物価を除いた年金は約0.96倍。起点ごとの値は前提と方法の1)。

平均に入る人の中身も、この25年で変わりました。2001年度から、60代前半に受け取る年金の定額部分(節1 の定額部分のうち、60代前半に受け取る分)の支給開始年齢が段階的に上がり、64歳までは報酬比例部分(給料に比例する分)だけの人も、平均に入るようになりました。国も「平成13年度の平均年金額は平成12年度以前のものと単純に比較することはできない」と注記しています(事業の概況 平成13年度 表11 注3)。65歳以上だけの平均が分かるのは2005年度末からで、171,058円が2024年度末の153,710円になり、約0.90倍で、同じ期間の物価(約1.14倍)を除くと約0.79倍です。

3. 毎年の改定を掛け合わせても物価に届かず、平均額はそれよりさらに低い

年金は、毎年4月に、すでに受け取っている人の額が改定されます。今の決まりは、前の記事(年金は、物価と同じだけ上がっているのか?)で、2016〜2026年度の11回に当てはめて見ました。式は1つです。

改定率 =(物価の伸びと名目手取り賃金の伸びの低い方)− 調整
いまの決まりの例(令和8年度・基礎年金):2.1% − 0.2% = 1.9%(物価 3.2%・名目手取り賃金 2.1%・調整 0.2%)

式の「調整」は、年金の伸びを抑える決まり(マクロ経済スライド)です。

では、1999年度末から2024年度末までの改定を、全部掛け合わせるとどうなるでしょう。毎年4月の改定率(2013年度は10月の−1.0%も)を、2000〜2024年度の25回分掛け合わせると、約1.01倍です。改定は前年の物価をもとに決まるので、比べる物価も1年前にそろえ、「前年の物価(1998年→2023年)」とします(約1.07倍)。

改定を掛け合わせた値・前年の物価・平均月額・物価の比べ

比べるもの倍率
毎年の改定率を掛け合わせたもの(2000〜2024年度の25回。すでに受け取っている人の分)約1.01
その改定の基になる前年の物価(1998年→2023年)約1.07
平均月額(1999年度末→2024年度末。節2 の表2)約0.85
同じ期間の物価(1999年→2024年)約1.11

並べると、読めることは2つです。

  1. 改定を25回重ねても約1.01倍で、前年の物価の約1.07倍に届きません(丸める前の値で計算。前提と方法の表3)。物価に対する差は約−5.8%(約0.94倍)です。これを、年ごとの改定率と前の年の物価の変化率の差で分けると、次の3つになります。3つの率は足し算でなく掛け算です(1.035 × 0.966 × 0.942 = 約0.94)。1行目と2行目はほぼ打ち消し合う(1.035 × 0.966 = 約1.00)ので、3行目がほぼ全体の差になります。
区分物価に対する差
物価より高く保った年(2000〜2006・2008・2010〜2013・2017年度。2000〜2002年度は、前の年の物価が下がったのに改定しなかった分など)約+3.5%
高く保った分を縮めた年(特例水準を下げた2013〜2015年度と、2009年度の一部)約−3.4%
物価より低く改定した年(2007・2009・2014〜2016・2018〜2022・2024年度ほか)約−5.8%(1・2行目が打ち消し合うので、全体の差とほぼ同じ)

2行目の特例水準は、物価が下がったのに年金額を据え置いたこと(2000〜2002年度など。1行目)などで、本来の水準より高くなっていた年金額です。その解消は法律(平成24年法律第99号)で決まりました(国の説明は前提と方法の2)。

3行目の中身は、賃金で改定した(または0.0%で改定しなかった)分が物価を下回った年の分と、調整(マクロ経済スライド)の分です(それぞれの率は前提と方法の表3)。3つは、掛け合わせると全体の差になるように年ごとに分けたもので、物価に届かない原因の割合ではありません。1つの年の改定に、特例水準の分とそれ以外の分が一緒に入っている年は、分けて2つの区分に入れています(2009年度・2013〜2015年度。前提と方法の表3)。

  1. 平均月額の約0.85倍は、改定の約1.01倍より低い値です。この差のうち、人の入れ替わりの分がどれだけかは、資料では分けられませんでした。1999年度末の年齢別、または「基礎または定額あり」と「基礎及び定額なし」(報酬比例部分だけの人)に分けた平均が、国の公表資料(事業の概況 平成10〜14年度)に載っていないためです(見た範囲は前提と方法の8)。資料で確かめられた、平均に関わる点は2つあります。

1つ目は、2000年4月の法改正(平成12年法律第18号)です。老齢厚生年金(報酬比例部分)の計算に使う乗率が、1000分の7.5から7.125(5%低い)になりました。国の説明に出てくる「今もらっている人の額」は、1人ずつの年金額のことで、この記事の平均(受け取る人全員の平均)とは別のものです。国(厚生省年金局長)は「これはあくまで将来に向けての措置でございますので、今もらっている方の年金額が減るということはございません」と答え(2000年2月3日 参議院 国民福祉委員会)、厚生省の「年金制度改正案大綱の概要」は、従来の式で計算した額は下回らないよう保障するとしています(新しい式の額がそれを下回らないようにする決まりで、毎年の改定の約束ではありません。前提と方法の2)。この引下げと保障が、平均にどれだけ効いたかは、資料がありません。

2つ目は、入れ替わりの手がかりになる数です。2024年度末では、64歳以下の人も入る全体の平均(150,289円)が、65歳以上だけの平均(153,710円)より約2.2%(3,421円)低くなっています。

問いに戻ると、資料で説明できるのは改定の分(前年の物価に対して約0.94倍)までで、平均がそれよりさらに低い分は、資料で分けられません。

4. これからの見通し:法律が下限として書くのは年金の額でなく割合。国の推計の額は、賃金が伸びる前提での見込み

ここまでは、いま実際に受け取っている人の話でした。では、これから受け取り始める人の年金はどうなるのでしょう。ここからは、国の推計で見ます(財政検証 令和6年・年金額の分布推計。前提は前提と方法の6)。

法律が下限として書いているのは、額ではなく割合です。 国のモデルの世帯(夫が40年会社員・妻が40年専業主婦)の夫婦2人分の年金が、現役男子の平均の手取り賃金の50%を上回る水準を確保する、と書いています(2004年の改正法 附則第2条)。この割合を所得代替率といいます。額の保証ではなく、割合の下限です。下回る見込みになったときは、調整の終了などを検討して措置を講じる、と同じ条に書かれています。一方、調整だけで年金の名目の額が前の年より下がることはない、という決まり(名目下限措置)もあります(前提と方法の4)。

額と割合の関係は、式で書けます。

額 = 国のモデルの現役男子の手取り賃金 × 所得代替率
1959年度生まれ:37.0万円 × 61.2% = 22.6万円
1989年度生まれ:41.2万円 × 51.1% = 21.1万円

調整(年金の伸びを抑える決まり。節3 の式の「調整」と同じ仕組みです)は、国の説明では、財源(保険料水準・国庫負担・積立金の活用方法)を固定し、その範囲で足りるよう年金の伸びを抑える仕組みです(財政検証レポート 第1章 p14)。調整が続くあいだ、割合は下がります(同 p28・p43)。会社員などの厚生年金の保険料率は、その固定した保険料水準で、2017年9月分から給料の 18.3% です(国の図は「平成29年度以降の保険料水準の固定」と書きます。同 p13。法律は厚生年金保険法81条4項)。詳しくは記事2-2 で扱います。

国の推計(過去30年投影。生産性の伸びを過去30年の実績の低い側に置いた国のケース。前提と方法の6)は、2034年度以降、物価を除いた賃金が毎年0.5%伸びる前提です(2029年度までは手取り賃金 37.0万円で横ばい)。

次の表は、国の推計の夫婦2人分の額です。国のモデルの世帯の額で、自分の世帯の額ではありません。 国自身が、「モデル年金では、厚生年金への加入期間がどの世代でも同じ(夫は40年、妻は0年)と仮定されている」と書いています(財政検証レポート 第1章 p58)。生まれ年どうしを同じ条件で比べる物差しです。「2024年度の値段に直した額」は、物価の上がりを除いて2024年度の値段にそろえた額で、口座に入る額ではありません。1人分の平均(男女計)も並べます。各世代が65歳になった時点の額です。

国の推計では、夫婦2人分は、1959年度生まれから1989年度生まれまでで約7%少なくなり、2004年度生まれ(2069年度に65歳)の 22.4万円でほぼ元の額に戻ります。1人分の平均(男女計)は、国が示す生まれ年の中では、1974年度生まれの 11.9万円が最も低く、2004年度生まれで 13.6万円です(1959年度生まれは 12.1万円)。 ※節1〜3の約15.0万円とは物差しが違います。国の1人分は、国民年金が中心の人や専業主婦(第3号)の期間が長い人も入れた、65歳で受け取り始める時点の額です(前提と方法の6)。

夫婦2人分(国が決めた世帯)の額と、1人分の平均(2024年度の値段に直した月額)

生まれ年度65歳になる年度夫婦2人分(モデル年金)1人分の平均(男女計)
1959202422.6万円12.1万円
1964202922.3万円12.0万円
1969203421.8万円—
1974203921.7万円11.9万円
1979204421.4万円—
1984204921.2万円12.0万円
1989205421.1万円—
1994205921.3万円12.7万円
2004206922.4万円13.6万円

※「—」は、国が出していない年です。2004年度生まれの行は、国の「年金額の分布推計」の値です(国の表は、1999年度生まれを示していません)。

自分の見込み額は、ねんきんネット(日本年金機構)で見られます。

詳しい分け方と、受け取り始めた後の額は、前提と方法の7にあります。

1人分の平均(男女計)が増える理由として、国は、労働参加の進展による厚生年金の加入期間の延びと、実質賃金の上昇を挙げています。女性の厚生年金の平均加入期間は、1959年度生まれの 17.2年から、1994年度生まれの 28.2年に伸びる見通しです。経済や人口の前提を変えると、結果も変わります(成長型・ゼロ成長のケースなどは、前提と方法の7)。

5. 自分の額は何で決まり、自分で動かせるのは何か

自分で変えられるのは、会社員なら、厚生年金に入る年数とその間の給料です。 自営業など国民年金を自分で払う人は、付加年金(月400円)を納めることなどです。受け取り始める年齢も額を変えます。

入った年金と年数で分けた平均

国は、1人ずつの年金を、入っていた年金の種類と年数で、4つに分けています。

型ごとの平均(1994年度生まれの女性・過去30年投影・2024年度の値段に直した月額。国の推計)

厚生年金に1年入ると:払う額と増える額

当メディアの試算です。例は、月収35.6万円(賞与を含めて12か月にならした額。年収約427万円)、本人の分だけ。

本人の保険料(年)= 月収 × 12 × 9.15% ……(1)
 会社の分も含めると × 2(=18.3%)
増える年金の年額 = 月収 × 5.481/1000 × 再評価率 × 加入月数 ……(2)

月収35.6万円で、1年(12か月)入ると:

扶養・国民年金の人が厚生年金に入ると:払った保険料に受け取りが並ぶ年齢

この表は、今は会社員・公務員の配偶者として扶養に入っている人(第3号)や、国民年金を自分で払っている人(第1号)が、厚生年金に入ると何が変わるかの比べです(今、会社員の人は、この表の行に当たりません)。並べたのは、払った保険料の合計と、65歳から受け取る年金の合計が同じになる年齢です。会社の分を自分が払った分に数えるかは見方が分かれるので、2通り示します。

その1年、厚生年金に入らなかったとしたら…本人の分だけを、払った側に数えると会社の分も、払った側に数えると
厚生年金に入らず、扶養されていたとしたら(第3号)約83歳約101歳
厚生年金に入らず、国民年金を自分で払っていたとしたら(第1号)約74歳約92歳

(障害・遺族の保障は入っていないので、得か損かはこの表だけでは決まりません)

この表は、払うお金と受け取るお金をそのまま足し合わせた単純な計算です。運用の利回り(国は物価を除いて年2.2%と置く。第1章 p25)で割り引いて、払った時点の値打ちに直して比べると、年齢はさらに遅くなります(前提と方法の3)。

入れていないもの:健康保険の給付(遺族年金との差し引きの例は前提と方法の3)。第3号の年齢は月収によりません。第1号は、厚生年金に入ると国民年金の保険料を別に払わなくてよくなる分を引くので、年齢が早くなり、月収で変わります。この表は、1年分の報酬比例だけの計算です。将来の調整(節3 で見た、年金の伸びを抑える調整と同じ仕組み。令和7年改正で、令和8年度から厚生年金の調整を弱める)による額の変化は、入れていません。計算の手順は前提と方法の3にあります。

自営業など、国民年金の保険料を自分で払う人は

2024年度(令和6年度)に40年納めた人の国民年金の満額(1人分)は、月6.8万円です。

付加年金(月400円)を納めると、納めた月数×200円が、年金の年額に上乗せされます。65歳から受け取れば、2年で、払った付加保険料に並びます(日本年金機構「2年以上受け取ると、納付した付加保険料以上」)。物価が上がっても、付加年金は増えません。

受け取りを遅らせると

遅らせた月数×0.7%、年金が増えます(70歳で+42%、75歳で+84%)。その間は受け取らないので、受け取る期間は短くなります。受け取りの合計が、65歳から受け取った場合の合計と等しくなるのは、70歳開始で約82歳・75歳開始で約87歳(これ以降は上回ります)です。

自分の数字は、どこで見るか

50歳未満のねんきん定期便は、将来の見込み額ではなく、今までの加入実績の額と厚生年金の加入月数です。将来の見込み額は、ねんきんネット(今の加入が60歳まで続くと仮定)や公的年金シミュレーターで見られます。非正規などで厚生年金に入っていなかった期間があるかは、ねんきんネットの年金記録で確かめられます(日本年金機構)。

支える人が減っても年金を払える仕組み(保険料・税・積立金)は、記事2-2「支える人が減っても、なぜ年金を払えるのか?」にあります。

あなたの年金の見込み額は、いくらでしょう?


用語の説明

所得代替率 その年に65歳になる人の夫婦2人分の年金が、同じ年の国のモデルの現役男子の手取り賃金の何割にあたるか(国の定義:夫婦2人分のモデル年金 ÷ 現役男子の平均手取り賃金。節4 と前提と方法の7で使う)。令和6年度は 22.6万円 ÷ 37.0万円 = 61.2%。

国のモデルの現役男子の手取り賃金 厚生年金に入る男子の平均賃金(共済の男子組合員も含めて算出)から、税・保険料を引いた額。将来の値は、国の見通し(過去30年投影では物価を除いた賃金が年0.5%伸びる前提)。

財政検証 国が年金のお金の見通しと、将来の年金の水準を点検するもの。令和6(2024)年のものは、経済の前提を変えた複数のケースで試算している。

モデル年金(モデル世帯) 夫が平均賃金で40年間会社員として働き、妻が40年間専業主婦(会社員・公務員に扶養されている配偶者で、国民年金の保険料を自分では払わない人)の夫婦の年金額。令和6年度に65歳になる人では、夫婦2人分で月22.6万円(うち厚生年金の報酬比例=給料に比例する分は約9.2万円)。 国は、モデル年金は厚生年金に入る期間がどの世代でも同じ(夫40年・妻0年)と仮定しているため、女性や高齢期まで働く人の増加などの影響を十分に確認することは困難、と書いている。本文で、モデル年金だけでなく型ごとの推計を使うのはこのため。

厚生年金・国民年金(基礎年金)・報酬比例

第1号・第2号・第3号被保険者(年金に入っている人の区分)

保険料率と労使折半 会社員などの厚生年金の保険料率は、給料(賞与を含む)の18.3%。本人と会社が半分ずつ、9.15%ずつ払う。 国民年金(自営業など)は定額で、実際の額は物価・賃金に合わせて毎年変わる。本文の計算には令和6年度の16,980円を使う(増える年金を2024年度の値段で見ているので、保険料も同じ年度にそろえる)。

再評価率 本文の計算では、今の月収を、国の公表額と同じ2024年度の値段にそろえるために、日本年金機構の再評価率の表の令和6年度の行(昭和31年度以後生まれ=1956年度以後生まれ。現役世代はほぼ全員)の 0.926 を掛ける。再評価率とは、機構が、過去の給料(賞与を含む)に掛けて現在の価値に直す倍率と説明しているもの。

実質と名目

マクロ経済スライド 説明は節3 の式と、前の記事。調整の期間・終わり方は前提と方法の7。改定率は、物価が名目手取り賃金(手取りで見た賃金)を上回るときは賃金の伸びで決め、そこから「調整」を差し引く。2026年度は、物価3.2%・名目手取り賃金2.1%・調整0.2%で、基礎年金は 2.1−0.2=1.9%。調整は、年金に加入している人の数の変化と平均余命の延びをもとに決めた率。厚生労働省は、2004年に将来の現役世代の保険料に上限を決め、その範囲に年金を合わせるために入れた、と説明している。

付加年金 本文(節5)に額の説明がある。納められるのは第1号の人など(自営業など)で、全額・一部の免除や納付猶予の人、国民年金基金の人は入れない(日本年金機構)。

平均余命 ある年齢の人が、その後平均して何年生きるか。65歳の平均余命は、男性 19.68年・女性 24.52年(令和7年簡易生命表)。65歳+これで、男性 約85歳・女性 約90歳。平均なので、人により違う。



前提と方法

1. 実績の平均月額・物価・賃金(節1〜3)

起点ごとの値と、範囲を変えた値(節2・節3。2024年度末 150,289円との比。物価は暦年・総合)

起点年金の倍率物価の倍率物価を除いた年金
1991年度末約1.00約1.17約0.85
1999年度末約0.85約1.11約0.77
2006年度末約0.93約1.14約0.82
2018年度末約1.05約1.09約0.96

2. 毎年の改定率の年表と、改定の積(節3・表3)

改定の積 =(1 + 2000年度の率)×(1 + 2001年度の率)× … ×(1 + 2024年度の率) ≒ 1.012

2013年度は、4月の 0.0% に、10月の▲1.0%(特例水準の解消の1段目)を入れました。4月の率だけで掛けると、約1.02倍です。

年度4月の改定率(既に受け取っている人)何があったか(国の資料の注)
20000.0%特例法で据置き(本来▲0.3)
20010.0%特例法で据置き(本来▲0.7)
20020.0%特例法で据置き(本来▲0.7・累積▲1.7)
2003-0.9%法律どおりなら▲2.6
2004-0.3%法律どおりなら▲2.0
20050.0%満額66208円のまま
2006-0.3%
20070.0%賃金0.0%で改定しなかった
20080.0%物価0.0
20090.0%特例水準のため据置き(本来の改定は賃金+0.9%)
20100.0%特例水準のため据置き(前年の物価は−1.4%下がったが、平成17年の水準より0.3%上回るため下げなかった)
2011-0.4%平成17年基準
2012-0.3%
20130.0%4月。10月に▲1.0(特例水準の解消1段目)
2014-0.7%特例水準の解消▲1.0+賃金0.3
20150.9%賃金2.3−MS0.9−特例水準0.5
20160.0%
2017-0.1%
20180.0%
20190.1%
20200.2%
2021-0.1%
2022-0.4%
20231.9%既裁定者(68歳以上)。新規裁定者は2.2
20242.7%

2000年4月の法改正(節3 の2. の1つ目)

3. 自分の月収で計算する手順(当メディアの試算)

式(1)(2)と、月収35.6万円の当てはめ(払う保険料・増える年金)は、節5 にあります。ここは残りの前提と、並ぶ年齢の手順です。

自分の場合で見る計算(例はすべて月収35.6万円=年収約427万円・厚生年金に1年入る場合・本人の分だけ。計算は「今の1年」の話。過去の期間の月数は、日本年金機構の「ねんきんネット」(年金記録の確認、年金見込額の試算などができるサービス)で見る)

今の状態で、次のどれかを選ぶ。

「今、会社員」(今、厚生年金に入っている人):節5 の(1)と(2)で、払う額と増える額を見る。並ぶ年齢は、入らなかった場合(「扶養されている」か「自分で国民年金を払う」)との比べになるので、「今、会社員」だけでは出さない。知りたいときは、ほかの2つの年齢を見る。 「扶養されている」(入っていない・扶養されている人):払った保険料の合計に、受け取りの合計が並ぶ年齢を出す。

「自分で国民年金を払う」(入っていない・国民年金を自分で払う人):厚生年金に入ると国民年金の保険料を別に払わなくてよくなるので、払う保険料から、同じ期間の国民年金の保険料(16,980円×12か月×年数)を引く。月収で変わる。

利回りを入れない単純な足し算では、この年数・年齢は、1年分でも30年分でも同じです(月収が同じなら)。利回りで割り引くと、早く払う年ほど並ぶ年齢は遅くなるので、1年分でも30年分でも同じとは言えなくなります。「本人の分だけ」「会社の分も含める」はどちらの見方もあるので、2通りを示す。

並ぶ年齢 = 受け取った年金の合計が、払った保険料の合計に並ぶ年齢。

並ぶ年数(受け取り始めてから)= 払う保険料の合計 ÷ 増える年金の年額
並ぶ年齢 = 65 + 並ぶ年数(65歳から受け取り始める場合)

受け取りを遅らせる場合と付加年金(自営業向け)

繰下げの計算の過程(読まなくても先に進める) t(65歳からの年数)=(1+増える率)×(開始年齢−65)÷ 増える率。等しくなる年齢 = 65 + t(増える率は、70歳開始 0.42・75歳開始 0.84)

遺族厚生年金を受け取る人の差し引き

配偶者が厚生年金に入っていて先に亡くなり、自分が65歳から遺族厚生年金と自分の老齢厚生年金の両方を受け取れる人の話です。両方を受け取るときの差し引きで、自分の老齢厚生年金が、亡くなった配偶者の報酬比例(厚生年金の、給料に比例する分)の半分までは、厚生年金に入って増えた分が、受け取りの合計に含まれない場合があります。たとえば亡くなった配偶者の報酬比例が月10万円なら、自分の老齢厚生年金が5万円までは、受け取る合計(遺族厚生年金と自分の老齢厚生年金。基礎年金は別に受け取ります)は7.5万円のまま変わりません。この差し引きは、2025年の改正の後も変わりません。条件と式は、下の「共通の前提」にあります。

共通の前提

4. 調整が終わる理由と、終わる年度がずれる理由

国のレポートは、次のように書いています。

5. 国の推計の女性の平均で、厚生年金に入る年数が 17.2年 → 28.2年(11.0年分)に伸びたときの、払う額ともらう額

(自分の月収の計算とは別。国の推計の平均の人の場合)

本人の保険料の増え = 月収 × 12 × 9.15% × 11.0年
増える年金の年額  = 月収 × 5.481/1000 × 0.926 × 12 × 11.0年

月収25.1万・35.6万・50.9万円で、本人の保険料の増えは約303万・約430万・約615万円(会社の分も含めると2倍)。増える年金の年額は約16.8万・約23.9万・約34.1万円。

6. 国の推計の前提(財政検証 令和6年・年金額の分布推計)

生まれ年度65歳70歳75歳80歳85歳90歳
195922.6万円22.221.721.220.720.3
196422.321.821.320.820.319.9
196921.821.420.920.420.019.8
197421.721.220.820.320.120.1
198421.220.820.620.620.620.6
199421.321.321.321.321.321.3

国は、受け取り始めた後の年金は物価で改定され、調整の期間は物価の伸びを下回って購買力が下がると説明している(財政検証レポート 第3章 p285〜286)。表の減りは、物価を除いた実質の額での減りで、名目の額は物価で上がる。

7. 節4 の補足:夫婦2人分が上下する分け方・受け取り始めた後の額・別のケース・1人分の平均

ここは、節4 の表の夫婦2人分(モデル年金)の話です。国は、この上下の理由を文では書いていません。表の2つの数から読めるのは、次の分け方です(国の表の2つの数から当メディアが計算した分け方)。

額 = 国のモデルの現役男子の手取り賃金 × 所得代替率
生まれ年度65歳になる年度国のモデルの現役男子の手取り賃金所得代替率
1959202437.0万円61.2%
1964202937.0万円60.1%
1969203437.3万円58.6%
1974203938.2万円56.7%
1979204439.2万円54.7%
1984204940.2万円52.9%
1989205441.2万円51.1%
1994205942.2万円50.4%
2004206944.4万円50.4%

※額は節4 の表です。手取り賃金×率は、四捨五入のため節4 の表の額と0.1万円ずれる行(1964・1969・1984年度生まれ)があります。2004年度生まれの行の出所は、出典欄にあります。

所得代替率を下げているのは、年金の伸びを抑える調整(マクロ経済スライド)です。年金の伸びを、物価・賃金の伸びより小さくする仕組みで、1年にどれだけ抑えるかは、年金に加入している人の数の変動と平均余命の延びで決まります。いつまで続けるかは、決まった財源(保険料の上限・税・積立金)で、概ね100年間の年金財政が均衡するところまでです(第1章 p14・p28)。基礎年金の分と報酬比例(厚生年金の、給料に比例する分)の分に別々にかかり、終わる年度が違います。受け取り始める時の額にも、受け取り始めた後の額にもかかります(第3章 p285〜286)。

受け取り始めた後の額も、国の表にあります(2024年度の値段に直した額。名目の額は物価で上がります)。国は、受け取り始めた後の年金は物価で改定され、調整の期間は物価の伸びを下回って購買力が下がると説明しています(財政検証レポート 第3章 p285〜286)。1959年度生まれは 65歳の 22.6万円が 90歳で 20.3万円、1984年度生まれは、75歳になる2059年度に 20.6万円となり、90歳まで同じ、1994年度生まれは 21.3万円のままの見通しです。国の表では、基礎年金の調整が終わる2057年度より後の列は、どの生まれ年も額が横ばいです(第3章 第3-7-13表〔2〕。国の文は、調整の期間は購買力が下がる、とだけ書いています)。

国の別のケース(国のケースは4つ:成長型・高成長実現・過去30年投影・1人当たりゼロ成長。生まれ年ごとの額が出ているのは、成長型と過去30年投影の2つ。上の表は、このうち過去30年投影)

所得代替率の下限:国は、50%を上回る水準を確保する、とする決まり(2004年の改正)があり、次の財政検証までの5年以内に50%を下回る見込みになったら、調整を終えることなどを検討し、措置を講ずることになっています。今回の見込みは、5年後(2029年度)で 59.4〜60.3% なので、この条件には当てはまらない、と国は書いています(第1章 p16・p28〜29。法律の文は前提と方法の4)。

人口の前提(出生率・寿命の延び・外国人の入国超過数)を変えた計算は、記事2-2 の節4「前提が外れたら」と、その「前提と方法」にあります。

この節の額は、夫婦のモデルとは物差しが違います。夫婦2人分の、ある条件の世帯の額ではなく、国が初めて推計した、生まれ年ごとの1人分の平均です。男女計は節4 の表にあります。男女別は次のとおりです。

生まれ年度男女
195914.9万円9.3万円
196414.6万円9.5万円
197414.1万円9.8万円
198414.1万円9.9万円
199414.7万円10.7万円
200415.5万円11.6万円

(65歳時点の老齢年金の平均月額。繰上げ・繰下げなし。過去30年投影ケース。2024年度の値段に直した額。自分の額ではなく、生まれ年・性別ごとの平均)

男女計は、国が示す6つの生まれ年の中で、1974年度生まれの 11.9万円が最も低く、2004年度生まれで 13.6万円になります。男性は 1974・1984年度生まれで 14.1万円まで下がり、2004年度生まれで 15.5万円と、1959年度生まれを上回ります。女性は一貫して上がります。

国は、若年世代ほど1人分の平均(男女計)が増える理由として、労働参加の進展による厚生年金の加入期間の延伸と、実質賃金の上昇を挙げています。女性の厚生年金の平均加入期間は、1959年度生まれの 17.2年から、1994年度生まれの 28.2年に伸びる見通しです。男性が 1974・1984年度生まれで下がる理由は、国の文に書いていません。

その分、保険料も多く払います。女性の平均で伸びる 11.0年分の、本人の保険料は、月収25.1万・35.6万・50.9万円の人で、約303万・約430万・約615万円(会社の分も含めると2倍)、増える年金の年額は、約16.8万・約23.9万・約34.1万円です(当メディアの試算。式は前提と方法の5)。


型は、国が20年で分けています。国が型ごとの平均を出しているのは、1959年度生まれ(65歳)と1994年度生まれ(30歳)の2つの生まれ年だけで、ほかの生まれ年は出ていません(年金部会 2024年11月5日 資料2)。この記事は、国が男女別に出している中から、1994年度生まれの女性の値を例にしています。同じ1994年度生まれの男性の値は、上と同じ順に 15.8万円・6.4万円・6.1万円・6.3万円です(過去30年投影・2024年度の値段に直した月額。同資料 p10)。国が出した2つの生まれ年(1959・1994年度)の男女どちらでも、厚生年金に20年以上入る型が最も高くなっています(同資料 p8・p10)。

国の表(過去30年投影・2024年度の値段)の基礎年金(40年納めた人の1人分)は、65歳で、1959年度生まれ(2024年度)の 6.7万円が、1994年度生まれ(2059年度)で 5.4万円です(約2割少ない。調整〔前提と方法の7の、年金の伸びを抑える調整〕で基礎年金が下がるため。6.7万円と6.8万円の違いは前提と方法の6)。上の型ごとの平均は、厚生年金に入っていた期間の分も含む額で、この基礎年金だけの額とは別の数です。

8. 断定できないこと



出典(項目ごと)